一期一会の心で感動を生み出す

おもてなしと効率化

日本では、2019年4月1日より、働き方改革関連法案の一部が施行されたことにより、大企業だけでなく、中小企業にとっても重要な経営課題として、従業員の働き方が考えられるようになりました。働き方改革には様々な課題がありますが、その中でも特に問題視されているのが従業員の長時間労働です。国際的に見ても、日本の長時間労働は深刻な問題で、働きすぎによる過労死や、職場での精神的ストレスによる自殺もたびたびニュースになっています。この問題を解決するために、法改正による時間外労働の上限規制や有休休暇の義務化など、多くの改革が施されています。このように働く時間が短くなることによって、従業員に求められる能力はいかに効率良く生産性を上げられるかになります。しかし、おもてなしという観点においては、効率化して生産性をアップさせることだけが大切ということではありません。

効率化を意識すべきか

働き方改革が求められる時代で、企業を経営していくためには効率化を無視することはできません。しかし、効率化を意識すべきは、現場で働く従業員ではありません。直接お客様と接している従業員が、効率化を一番に考えて働いてしまうと、おもてなしは成立しません。従業員は目の前のお客様に対して、自分できることを全力で取り組むことで、感動を生み出す必要があります。効率化は経営者や管理職が考えるべき問題であり、従業員がお客様に対して気持ちよくおもてなしを実践できる環境を整備し、そういった従業員を賞賛する雰囲気を作り出すことが重要になります。

一期一会の心で尽くす

一期一会とは茶道に由来する言葉で、「茶会に臨む際には、その機会が一生に一度の出会いであることを心得て、亭主と客はともに相手を思いやり、今できる最高のおもてなしをしましょう」という意味になります。ビジネスにおいては効率化を求めるあまり、お客様への対応はマニュアル化されて、どのお客様に対しても平等なサービスを提供しています。しかし、これではおもてなしとは言えません。マニュアル通りの対応することで、100人いれば99人が満足するかもしれませんが、残った1人は満足できないかもしれません。おもてなしの本質は「一期一会」です。たった一度の出会いに対して全力を尽くすことによって、100人いれば100通りの対応ができるようになり、これがおもてなしとなってお客様の感動を生み出すことができるようになるのです。